仏教心理学研究の現在地【仏心ラボの思い】

この記事を書いた人
武田 正文

浄土真宗本願寺派高善寺(島根県邑南町)住職。 広島大学大学院教育学研究科心理学専攻修了後、精神科病院で心理療法士を経験し、現在は法務のかたわら学校や企業でカウンセラーとして臨床に携わっている。 心理学者としてスピリチュアリティを研究しながら、象徴的なメッセージや自己理解のツールとしての役割にも注目しています。 臨床心理士、公認心理師、広島大学客員講師、YouTube「武田正文の仏心チャンネル」、山陰中央新報「教えの庭から」連載中、中国新聞セレクト「仏教と心理学でビジネス考」連載中。

仏心ラボとは、仏教心理学研究所のつもりでネーミングしています。

私は浄土真宗本願寺派の僧侶で、臨床心理士と公認心理師としてカウンセラーもしています。YouTubeやVoicyでは仏教と心理学から様々なテーマについて考察しております。

仏教心理学研究のこれまで

仏教も心理学も心の悩みを解決して、豊かな人生を歩むことを目指すという点では共通点が多くあります。

実は時代の流れの中では常に密接にかかわりあいながら、この両者の関係の整理にはまだまだ課題が残っています。

 

日本に心理学を紹介した人たちは実は仏教学者が多くいました。

西洋の学問を使って仏教をアップデートしようとしたときに心理学との相性の良さは明治時代のころから注目されていたようです。

実際、偉大な心理学者たちは仏教への強い関心を示していました。

 

当時から仏教心理学研究は少しずつはじまり、今では日本仏教心理学会も設立されています。

 

もっと昔の仏教と心理学

実はさらに時代をさかのぼってみても仏教と心理学の関係はありました。

2000年前の仏教は、ちょうどインドから中国へ渡る頃でした。当時の仏教の中には「唯識」という考え方がありました。

唯識は深層心理の分析を丁寧に行っており、心理学の中では精神分析と共通するところが多くあります。

浄土真宗の七高僧という偉大な七人の僧侶のうちのお二人、天親菩薩と曇鸞大師はちょうどこの時代の人であり、二人とも唯識を研究したのちに浄土系の仏教にお入りになりました。

 

スピリチュアルと仏教と心理学

さらに連想を広げていきます。

曇鸞大師は中国の僧侶でした。大変優秀な人だったそうで、とても長く難解な仏教の経典の研究をしていました。

ある日、病気になってしまった曇鸞大師は、「ここで命終わっては最後まで研究ができない」ことにお気づきになり、不老不死の術を身につけるべく仙人のところに修行に行きます。(ここで仙人が現れるところが中国仏教のかっこいいところです)

優秀な方でしたのでこの仙人の術もしばらくすれば身につけてしまいました。

そののち、ゆっくりと仏教研究をするために帰るときに出会った人から、浄土系の仏教、南無阿弥陀仏の教えを聞き、自分の判断が間違っていたことに気づきました。仙人の教えを焼き払い、それからは南無阿弥陀仏の研究をされたそうです。

 

さて、どのようなご感想をお持ちでしょうか。なんとなく、仏教僧侶は仏教しか学んでいないというイメージがおありかと思いますが、実は違います。曇鸞大師のエピソードからは柔軟にいろいろなものを学んだ後に仏教に落ち着いたということが分かります。

 

唯識と引き寄せの法則

唯識は、この世で起きていることはすべて個人の認識が作り出していると考えます。

私はここが引き寄せの法則や量子力学と共通点のあるところだと感じています。

しかし、異なる分野のものを似ているから「同じである」と判断するのには慎重にならねばなりません。

 

領域をまたいで考察することはこのインターネットの発達し、AIが出現した現代では一気に研究が進む可能性があります。

この仏心ラボでは、思い切った考察をなるべく丁寧に進めていきますので、この領域に関心のおありの方はぜひ継続的にご覧いただければうれしいです。

 

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